スプレッド取引の基礎と応用

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スプレッド取引の基礎と応用 
相場環境に左右されないマーケット・ニュートラル戦略とは


ヘッジファンドなどが多用する投資手法「マーケット・ニュートラル戦略(スプレッド売買)」の方法と実戦をご紹介致します。

この機能のデモ    スプレッド専用チャートは 銘柄加工シート にございます。

【スプレッド取引の特徴】

〔買いと売りの両建て取引〕
一番の特徴は2銘柄の買いポジションと売りポジションを組み合わせた両建て取引であるということです。一般の投資家がこの取引を行う際は買いポジションは現物取引、信用取引のどちらでも考えられますが、売りポジションは信用取引の空売りを利用する場合が多いようです。

〔2銘柄のスプレッドの拡大、縮小を予想する運用手法〕
一つの銘柄の上げ下げを単純に予想するのではなく、2銘柄の株価の差(スプレッド)が拡大するのか、縮小するのかを予想する取引です。

〔市場全体の上げ下げの影響を受けにくい取引〕
2銘柄の両建て取引となっているため、市場全体の上げ下げによるポジションの損益への影響が軽微であると考えられます。但し、個々の銘柄により市場全体に影響を受けやすい値動きをする場合や通常の値動きでもほとんど市場の影響を受けない銘柄なども存在するため、2銘柄の組み合わせにより市場全体の動きからの影響度は異なります。

〔さまざまな根拠からスプレッドの拡大、縮小を予想する〕
2銘柄の株価の差(スプレッド)の拡大、縮小を予想する根拠は様々です。同じ業種内の競合会社の業績予想の優劣が株価に反映すると想定してスプレッドのポジションを取る場合や同じ動きをすると考えられる2銘柄のスプレッドが統計的に拡大し(縮まり)過ぎている場合などの他、過去のスプレッドの推移を通常の株価チャートに見立てテクニカル分析を用いる場合などが主に考えられます。

〔スプレッド取引の短所(デメリット)もある〕
前述の様に相場の上げ下げに左右されず、収益機会を狙えるといった長所の一方、売り買い2つの取引を同時に行わなければならない為、一般的には手数料等の取引コストが通常の取引に比較して大きくなると言った短所もあります。また、2銘柄のスプレッドが自分の予想とは大きく反対に拡大、縮小する場合もあり、損失が限定されているわけではありません。



【様々なスプレッド戦略】

以下、代表的なスプレッド戦略の考え方をご紹介いたします。

〔業績予想、材料の出現等で2銘柄の変化を想定〕
競合する大手ビール会社2社が夏本番前にそれぞれ新製品のビールを発売しました。A社のビールは前評判もよく実際飲んだところ味もよい。一方、B社のビールは宣伝は華々しいが今ひとつ美味しいとは思えない。このビールの売れ行きが株価に反映すると考えた投資家はA社を500円で1,000株買い、B社を450円で1,000株空売りするスプレッド取引を行いました。夏の終わりには市場全体は下落していましたが、A社のビールの評判からA社株は底堅く推移する一方、B社株は市場全体に歩調を合わせるかの様に下落しました。この投資家の予想は見事に的中、夏の終わり頃、A社株を510円で売り、B社株を430円で買い戻しました。この取引では50円だったスプレッドが80円に拡大、30円分の利益となりました。
もし、投資家がB社のビールの方が好評だと考えて、B社株買いのA社株売りを行っていた場合、30円分の損失となっていました。


〔統計的に値動きを観察する(標準偏差の考え方などを利用する)〕
大手銀行E行とF行は株価の水準自体は異なりましたが通常は非常に似た値動きをしていました。また両行の株価の差(スプレッド)も一定しており過去3年間の一日のスプレッドを調べたところ3分の2程の期間は400円から500円の間で推移していることが分かりました。ある日、不良債権額が公表されるとE行は反応しませんでしたが、その額が大きかったF行は下落しました。その結果、E行とF行のスプレッドは700円に拡大しました。過去3年間では700円に拡大した日は全体の1%位の日数しかなく、また400円から500円のレンジに戻ると考えた投資家はE行を空売りして、F行を買うというスプレッド取引を行いました。取引から数週間経ちました。どうもE行の実際の不良債権額は以前発表された額よりかなり大きいというニュースが市場に伝わりE行株は急落、結果的に700円まで拡大していた両行のスプレッドは縮小、400円から500円のレンジに再び戻りました。この投資家はスプレッド取引を利益で手仕舞いました。
もし、E行が急落した際、F行の不良債権額も更に大きくなる可能性が報道されF行がE行以上に下落していればスプレッドは更に拡大、投資家の取引は損失となりました。


〔スプレッドにテクニカル分析を用いる〕
ここ数年、不振の大手電気メーカーと業績好調なその子会社のクレジット・カード会社の株価の差(スプレッド)は親会社株の下落と子会社株の横這いという傾向が顕著で、株価の水準自体は依然、親会社が子会社を遥かに上回っているものの、長らく縮小する傾向にありました。
日頃から両社の株価のスプレッドに興味を持っていた投資家はある時、そのスプレッドの形状がチャート分析の逆三尊を形成しつつある事に気付きました。その形状がスプレッドの大底であると判断したこの投資家はスプレッドのトレンドが変換し、今後は拡大すると予想、大手電気メーカーを買い、子会社を空売りするスプレッド取引を行いました。数ヶ月後、大手電気メーカーは大々的なリストラを発表すると同時に株価は反発、スプレッドも拡大に転じました。
もし、逆三尊が完成せず再び底割れしていれば、チャート・パターンが壊れた段階でこの投資家は損切りして取引を終えなければならなかったかもしれません。



【スプレッド売買の損益計算の例】

スプレッド売買の損益がどのように計算されるか、簡単な例を用いてご説明いたします。
4月1日のA社の株価が1,200円、B社の株価が1,000円、スプレッド200円。
5月1日のA社の株価が1,350円、B社の株価が1,100円、スプレッド250円。
6月1日のA社の株価が1,100円、B社の株価が950円。スプレッド150円。

〔例1〕
A社とB社のスプレッドの拡大を予想、予想通り拡大して手仕舞った場合。
4月1日A社1,200円で1000株買い。B社1,000円で1,000株空売り。
5月1日A社1,350円で1000株売り。B社1,100円で1,000株買い。
A社の売買損益の結果:(1,350-1,200)×1000株、15万円の利益
B社の売買損益の結果:(1,000-1,100)×1000株、10万円の損失
⇒A社とB社の売買損益を合算すると全体で5万円の利益となった。

〔例2〕
A社とB社のスプレッドの拡大を予想、予想に反し縮小して手仕舞った場合。
4月1日A社1,200円で1000株買い。B社1,000円で1,000株空売り。
6月1日A社1,100円で1000株売り。B社950円で1,000株買い。
A社の売買損益の結果:(1,100-1,200)×1000株、10万円の損失
B社の売買損益の結果:(1,000-950)×1000株、5万円の利益
⇒A社とB社の売買損益を合算すると全体で5万円の損失となった。

※上記の計算は分かりやすく例示するため売買手数料、税金、金利などを含めておりませんが、実際の売買に際してはそれぞれのコストを考慮して損益を計算する必要がございます。



【最後に】
スプレッド取引は利用の仕方では大変有効な運用手法であることは確かです。マーケットの環境に関わらず、有力なヘッジファンドなどが収益を上げられるのはこの両建て取引を主な運用方法として活用しているからだと言われています。ここでは株式の売買をご紹介しましたが、ヘッジファンドなどのプロはこの応用として株式指数や異なる種類の債券、金や銀といった貴金属同士の両建て取引等様々な商品を対象に売買を行っています。

一般の個人投資家にとってもスプレッド取引は上がるか下がるかの通常の株式投資とは異なり、個人の個々の発想で無数の投資戦略を考える事が可能です。世間の常識や一般の投資家には気が付かない発想で様々な銘柄間の関係の変化を予想するのもスプレッド取引の醍醐味の一つと言えるでしょう。

また、通常の株式投資にも共通する事ですが、自分の予想に反してスプレッドが動いた時などの為、取引を始める前などから損切りするルールやタイミングなどについて想定しておくことも重要な事ではないでしょうか。


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